ヒューマンドキュメンタリー映画祭・阿倍野|第14回・2016年度映画上映

第14回(2016年)上映作品

“記憶”と生きる(215分)

元「慰安婦」たちが肩を寄せ合って暮らす韓国の「ナヌム(分かち合い)の家」。1994年12月から2年にわたって日本人ジャーナリストが6人のハルモニたちの生活と声をカメラで記録した。元「慰安婦」という共通の体験以外、その境遇や歩んできた道はまったく異なるハルモニたち。支えあい、時には激しくぶつかり合う。そんな生活の中で彼女たちは消せない過去の記憶と、抑えられない感情を日本人の記録者にぶつけ、吐露する。あれから20年が経った今、あのハルモニたちはもうこの世にいない。残されたのは、彼女たちの声と姿を記録した映像だった。

第一部:分かち合いの家(124分)
「ナヌムの家」で暮らすハルモニたち。過人を忘れるための洒が手放せず荒む女性、息子に過去を知られ悩み苦しんだ女性、戦後、結婚もできず孤独に生きてきた女性…。彼女たちの日常生活とともに、「慰安婦」の記憶や戦後の波乱の半生を語る5人の声を丹念に記録。

第二部:姜徳景〔カン・ドクキョン〕(91分)
ナヌムの家の住人で最年少の姜穂景は、「女子挺身隊」として日本に渡るが、脱走したことで「慰安婦」にされる。望まない子を宿し、戦後帰国した彼女の波乱の半生。その体験と心情を姜徳景は表現した。やがて肺iがん末期ど宣告される。彼女が死を迎えるまでの2年間を記録。

土井 敏邦 監督

1953年佐賀県生まれ
中東専門雑誌の編集記者を経てフリー・ジャーナリスト。1985年よりパレスチナ・イスラエルの現地取材を続けている。1993年より映像取材も開始し、NHKや民放で多くのドキュメンタリー番組を発表。
主な作品は「“私”を生きる」「異国に生きる 日本の中のビルマ人」「飯舘村 放射能と帰村」「ガザに生きる」「ガザ攻撃 2014年夏」など。

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土井 敏邦 監督からのメッセージ

「なぜ撮影から20年後の映画化なのか」とよく問われる。
年月を経るに従って、証言したハルモニたちが次々と亡くなっていき、映像素材がどんどん劣化していく。
この映像を歴史資料として記録映画にまとめなければと焦りながらも、他の取材に追われ、作業は遅々として進まなかった。
しかし2013年5月に橋下・大阪市長が「「慰安婦」は世界の各国にあった。日本だけがどうして取り上げられるのか」と日本の加害責任を回避する発言をしたとき、「被害女性たちの“顔”が見えないため、その“痛み”が理解できないでいる」と思った。その “顔”を伝える素材を持っている自分が今こそ映像化しなければと考え、同年に編集作業に本格的に乗り出した。
この映画は、「『慰安婦』問題の解説」や「史実の検証」を目的としたものではない。ハルモニたちの脳裏に深く刻まれた「慰安婦」体験と、それを引きずって生きてきた壮絶な戦後の半生、 “人としての尊厳”を取り戻すために彼女たちが日本人ジャーナリストの私に敢えて語った、その“記憶”を記録することをめざしたものである。そしてそれは、あのハルモニたちと出会い関わった加害国のジャーナリストである私の責務だと思っている。

ドキュメント・トーク

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