ヒューマンドキュメンタリー映画祭・阿倍野|第14回・2016年度映画上映

第14回(2016年)上映作品

大地の花咲き
~洞爺・佐々木ファーム 喜びですべてを繋ぐ~(95分)

北海道・洞爺湖畔の佐々木ファーム。
毎朝「愛と喜びを循環するぞ!」と宣言して畑に入る。 野菜は自分たちの言葉を全部聴いている。「元気か?」「ありがとう」と声をかける。 農薬も肥料も使わない。虫も雑草も仲間たち。
その想いの裏には、大切な我が子 大地君の存在があった。農場の運営で家族で意見が対立。 すべてを投げ出して、この地を去ろうとしたその時、大地君は突然天国へお引っ越しした。
「僕が家族を守るからね」という言葉を残して。
生きるって?命って?悲しみの中で見つけた道は、「野菜もうれしい 人もうれしい“喜びの循環”って成り立たない?」。虫を殺せなくなった。除草剤が使えなくなった。微生物や菌たちとすらも、一緒に農業できないか?目に映る命にひたすら「ありがとう」を言いながら農作業にあけくれた。
畑は荒れ、収穫量は減り、もうだめかと思われた時。不思議な事が起きた。「味が変わったけど、肥料を変えたのか?」「野菜の持ちがいいのは、どんな保存料を使ってるんだ?」。ファームの思いを知って、支えようという人達の輪が広がっていく。
ファームで生き生き働くスタッフ達の成長も含め、地球の新たな未来を模索する農家の1年を追いかけた。


岩崎 靖子 監督

京都府生まれ
映像作家。平成10年関西学院大学卒業後、(株)ツーカーホン関西で5年間会社員として働き、企画部でマーケティング・販売促進を手がけるかたわら、自分の人生をかけられる何かを探し続けていた。平成11年コーチングに出会い、人前恐怖症にも関わらず女優にチャレンジ。「表現活動を通じて人のお役に立ちたい」と、平成14年、ツーカーホン関西を退社。ドキュメンタリーが大好きだったことから、平成17年には小野敬広とともに映像制作チーム E・Eプロジェクトを立ち上げ。初作品「命がしゃべっている」を発表。平成20年には、制作した映画を配給する団体「ハートオブミラクル」を立ち上げ、平成22年にはNPO法人化。自主上映を募るという形で配給活動を開始。代表作に平成25年制作の「僕のうしろに道はできる~奇跡が奇跡でなくなる日に向かって」(文部科学省特別選定)、平成26年制作の「日本一幸せな社員をつくる!~ホテルアソシア名古屋ターミナルの挑戦~"(文部科学省選定)、平成27年制作「大地の花咲き~洞爺・佐々木ファーム"喜び"ですべてを繋ぐ~」。作品は日本のみならず、海外18か国でも上映の輪が広がっている。「この地球上に生きるすべての命が、喜びに溢れて生きている未来」という大きな夢に向かって、活動中。

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岩崎 靖子監督からのメッセージ

人が生き生きし始める空間ってどんな空間なんだろう。
ここ数年特にその事に興味がありました。人のみならず、野菜も虫もあらゆる命が生き生きし始める、そんな空間を、私は北海道に見つけてしまったのです。
きっかけは、大阪で友人の一言。「北海道にとても面白い農家がある。夏に畑を解放してイベントをやるからいかない?」。理屈ぬきにワクワク。まだ映画にするかはわからないけれど、カメラを片手に北海道へ。ところが。記録的な大雨にイベントは中止。
しかし、物語はそこから始まるのです。イベントに出店予定だったレストランや様々な店のスタッフが、身内だけでもやろう、と自主的に動き出し、小さいながらもイベントは実現。主催者の農家の村上さゆみさんが、泣いていました。「こんなひどい雨で、イベントとしては失敗。出店予定だった方も、赤字で損害を被る。いくらでも批判や文句が出てもいいはず。なのに、やれる形を考えようよと、こんな素敵な笑顔で楽しいと言いながら、やってくれる。私はこんな世界を創りたかった。いい時も悪い時も一緒に生きていける社会。だから嬉しい」。
村上さんの涙と、その周りのスタッフの生き生きした笑顔に、ここには何かある、と直観し、撮影を開始したのでした。何度も北海道に足を運び、取材を重ねていく内、見えて来たのは、佐々木ファーム社長ご夫妻・村上貴仁さんとさゆみさんの、命への向き合い方でした。
農薬で虫を殺すことも、枯葉剤で草を枯らすこともせず、病原菌も含めて、すべての命に「ありがとう」で向き合う二人。自分の都合ではなく、相手の命も尊重すること。自分の都合で、周りを犠牲にするのではなく、共に輝いて生きていける道を探すこと。それは、そろそろ私達が地球規模で考えていかねばならないことではないでしょうか。
農業という現実の中で、それを実現しようと奮闘しているファームの姿をご覧いただき、何かを感じていただけたならうれしいです。

舞台挨拶(岩崎 靖子 監督)

もう、初めて畑を見たときは、やっぱりビックリしまして、野菜はどこだろうと。
これ草原じゃないかと、本当に思ったんですけども。
でも、そこには深い深いあの思いが込められていたということで。
私は月に一回か二回、北海道に飛んでずっと撮影をしたんですが。
なんかですね、畑にいくといままで、体験したことがないような不思議な喜び、うれしいっていうんですか、すごくうれしい感覚が、足元からわって上がって来るんですね。
これは一体なんだろうなあって思ってたんですが、ある時、貴仁さんのお話を聞いて、もしかしたらこういう事かなって思ったことがありまして。
貴仁さんはいつも畑にいるときに、その畑にいる野菜だけじゃなくて、全ての生き物に、命に「ありがとう」って言うようにしてるんだって仰ってました。
それは、例えば病原菌って言われるものにも、ありがとうって言おうって思ってるんだって仰ってました。そうやって、全ての命にありがとうって言うと、病原菌君も嬉しいのか、大暴れするそうで、それで結構、野菜とかがダメになっちゃたりとかいうことも、あるみたいなんですけど。でも、ふとある時、「あ、でもそれもやっぱりありがとうなんだって、気付いたんだ」って仰ってて、「自分もやっぱりその生命力が高い野菜を皆さんにお届けして、そして皆さんが命を繋いでいくっていうお役に立ちたいって、毎日思っている」と。


病原菌君にやられちゃうってことは、やっぱり生命力がちょっと弱い野菜で、そしてまたその野菜もダメになっちゃうことで、今度は土の養分になって次の年の、作物達の命を育てる大切な役割を出来る。それは病原菌君がいてくれるからだっていうことで、だから何重にも、それは「病原菌君にもやっぱり役割があって、病原菌君にもありがとうだなって思うんだ」って仰ってました。
それから映画の中で、「ありがとうと言ったらいろんな不思議な事が起こってきた」ってお話がありますけども、時間の関係で入れられなかった話があって、もうちょっと詳しく言いますと、ありがとう、ありがとうって言いだしたら、まず一番の変化は自分の体が変化したそうでした。平熱が上がったそうです。今いろんな病気の原因が体温、基礎体温が下がっちゃってることで、自然の免疫力がなかなか発揮できなくて、病気になるっていう話もあるんですけど。ありがとうって言ってたら基礎体温が上がったんですって。なんでかな~って思ってたんだけども。自分は1人でこの体は生きてると思ってるけど、実はこの体には、いっぱい無数の菌とか微生物がいるんですよね。今、腸内細菌をとかね、それを育てたら健康になるとか言われたりしますけど。そういう菌とかがいっぱい一緒に生きていてくれて、その働きでもって自分たちも生かされてるわけだけど。
自分がありがとう、ありがとうって言った時に、まずそのありがとう、一番側で聞いてたのはその共に生きてる菌や微生物だったんです。たぶん、それが生き生きと活性化して、そして自分が元気になっていったんじゃないかって仰っていました。

そして、そのありがとう言い始めたころは、もう家族同士でいっぱい喧嘩もしたりして、そうするとですね、悪いことばっかりやっぱり起こったんだって。もうちょっと軽トラックで、近くまで行こうと思って、ちょっと、ほんのちょっとスピード出したら、直ぐにパトカーに捕まっちゃたりとか。
もう石が、トラクター乗ってたら石が飛んできて、そしてあろう事かこんな隙間に入るのかというところに入って、もうガチっと固まっちゃって、機械が動かなくなっちゃったとか。
もうそんなことがいっぱい起きたから、なんかありがとうって言ってたら、逆のことが起きてきたーとか言って。それでトラクターも故障しないんです。
ものすごい調子がいいんですって。石が飛んできたら、パーンと跳ね返すみたいな感じにだったりとか、「ほんとに不思議なことがいっぱい起きたんだよ」って仰ってて。
そして、その結果、野菜の味も変わったとか、いろいろ言われるようになっていったんだ。これはすごいな。科学的には証明ができないけれども、でもなにかそこにはあると仰っていました。私もちょっとね、それがどうしてそういうことになるのかわからないんですけど、でもやっぱり命っていうものは、ありがとうとか大好きだよとか、愛とかやっぱり注がれたりしたら嬉しいもんなんだし。それからもしかしたら、もう私たちが生きてないと思ってるトラクターとかも、生きてないんですけども、なにかしらがあるのかもしれないなって思わせてもらいました。

貴仁さんはやっぱり、私たちっていうのは他の命に生かしてもらってる存在なんだって。自分達もこの大きな自然の中の一部なんだっていつも仰っていて、それが循環して成り立っているってことはもう忘れてはいけないって仰っていました。 私はまだあまり深くは捉えきれてはいなかったんですが、でもこないだですね、蜜蜂の養蜂家の方に出会ったんです。その方は、もう今、蜜蜂がどんどん減っていっている状況にあるんだと。それがどうも環境の変化だったり、それから農薬を使うことによって、蜜蜂がやられて、どんどん減っていってると。蜜蜂は蜜を集めて、蜂蜜を作ってくれてるだけじゃなくって実は非常に重要な役割を果たしてて、お花の受粉をする。その事によって実がなる。野菜がなるって、そういう役割を果たしてくれているわけだけども。もしその蜜蜂達が絶滅してしまったとしたら、その受粉をする昆虫の大きな部分を担っている種はいなくなっちゃうってことで。もしかしたら、食糧飢饉にすら私たちは陥る可能性がある。
人間っていうのは、命を生み出せるように思ってるけど、でももし蜜蜂達が絶滅してしまったら、もう二度と私たちは、その命をつくりだすってことは出来ないんだと。私たちは、みんな繋がって、ひとつの運命を共有してるんだっていうと仰ったんですね。
そんな話を聞くとき、初めて本当にそうだな。小さな蜂に、私ら助けられて生きてたっていうことだったんだなっていうことを思わせてもらいました。
私たち日本人は昔から割と自然というものを、尊敬して、感謝して、生きてきたんですが、最近やっぱりちょっとそのことが忘れがちになっているのかな。
そのことによって、だんだん自分たち自身の首まで、絞めるような状況に陥ってきてるのかなっていうことは感じています。でもだからこそ、今それを思い出して、いろんなものに感謝をして。そして、この映画祭のテーマの一つでもある「共に生きる」っていうことを、思い出せば、私は人類ってそんなに悪い存在じゃないって、信じていて。きっと気付いたら、必ず変わっていく。だからこういう映画祭を通して、「共に生きる」っていうことを、こうやって、一つの場で、みんなで考える事によって、必ず未来は少し1mmでも変わって行くって信じています。ですから、今日ここで上映いただけたことも嬉しいですし、今日は、前の作品、その前の作品も見せていただいたんですけど、命にこんなに真摯に向き合ってくださってる方がいっぱいいらっしゃるってことも、とっても嬉しかったですし。未来が少しでも嬉しい方になっていったらいいなってことを、今日はつくづくと感じました。
今日は本当に貴重な機会をありがとうございました。

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