第14回(2016年)上映作品
Start Line(スタートライン)(112分)
耳、聞こえません。
コミュニケーション、苦手です。
そんな私の日本縦断自転車旅。
生まれっき耳が聞こえない今村監督が、コミュニケーションの壁を乗り越えようと、冲縄→北海道日本縦断の自転車旅に出る。
道に迷ったり、交通ルールにあたふたしたり、“聞こえる大”との会話に四苦八苦したり…そんな彼女の姿を、叱咤激励しつつ追い続けるのは、伴走者にしてカメラ撮影を担う哲さん。2人の間には、安易な手助けや会話の通訳はしないという鉄則かあった。
厳しさにヘコんで、バテて、泣いて…それでもひたすら走り続ける道中、出会った大はのべ300人。
温かなふれあいもあれば、会話に入れず心を閉じ黙りこむことも。そんな時、哲さんの鋭い言葉が飛ぶ。「コミュニケーションを、あなた自身が切っている!」私はどうすべきなのか…悩み苦しむ彼女に、奇跡的な出会いが待っていた。聴力にハンディキャップをもつ自転車の旅人、ウィル。
カタコトの日本語で楽しそうに人々とコミュニケーションするその姿に、彼女は驚く。なぜそんなことができるの!?満天の星の下、ウィルは言った「ピープルインサイドオナジ」
最北端の地は、ゴールなのか?それとも?人生の旅そのものの57日間3,824km。ニッポン中のためらう大に観てほしい、一篇の勇気のおすそわけです。
今村 彩子 監督
愛知県生まれ
生まれつき耳の聞こえないドキュメンタリー映画監督。
大学在学中にダスキン愛の輪基金障害者リーダー海外研修派遣事業第18期生としてカリフォルニア州立大学ノースリッジ校に留学し、映像制作とアメリカ手話を学ぶ。
帰国後、バイト代でビデオカメラを購入し、ドキュメンタリー映像制作を開始。主な作品は「珈琲とエンピツ」「架け橋 きこえなかった3.11」
※Wikipediaより転載、一部編集
今村 彩子監督からのメッセージ
生まれっき耳が聞こえない私は、聞こえる人と接する時に、コミュニケーションの“壁”を感じてきた。
一昨年、母と祖父を亡くし落ち込む日々が絞く。「このままではいけない。前を向いて生きていくためにも、自転車で日本鬘断の旅に出て、苦手なコミュニケーションをテーマに映画を作ろう!」そう決意すると、ショベルカーのようにぐんぐん突き進んだ。スポンサー企業を探し、クラウドファンディングでサポーターを募る。次第に応援してくれる人や企業も増え、実現へと加速する夢を一緒に見てくれる仲間が増えていくことは、心強く嬉しかった。
いざ出発すると。伴走者であり撮影担当の“哲さん”から、叱咤の連続。辛くて情けなくて、つい反抗的になり「パッキヤロー!!!」と叫ぴながら漕いだことも。旅の終盤には、聞こえないという立場は同じなのに誰とでも話せてしまうウィルと自分を比ぺ、しんどくなったりした。
「自分は何もできなかった。応援してくれた皆に顔向けできない・・・」帰郷後は別の落ち込みが待っていた。死にたいとさえ思った。「旅で出来なかったことを映画にすれば」伴走者のアドバイスもあり、取り繕わず、ありのままを出すことにした。心の整理をしながら、すべての映像に目を通し、構成を考え、場面をつないでいった。叱られっぱなしの自分の姿に目を背けたくなることもあったが、スタッフに元気をもらい完成させることができた。
これは「今村彩子がスタートラインに立つまでの映画」とは、完成作を観たテレビ番組のディレクターの言葉だが、本当にそう思う。伴走者は「いや、スタートラインには立ててない。スタートラインがどこにあるかおぽろげに分かっただけ」と手厳しいが(笑)縦断の旅は許わった。これからは、あの日々のいろんな出来事の意味を見つけていく旅だと思う。
この映画には.情けない私がたくさん出てきますが、あなたの背中を押すきっかけになったら、本当に嬉しいです。
ドキュメント・トーク《生きる》を伝える
今村 彩子 監督/堀田 哲生氏
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