ヒューマンドキュメンタリー映画祭・阿倍野|第13回・2015年度映画上映

第13回(2015年)上映作品

みんなの学校(106分)

大空小学校がめざすのは、「不登校ゼロ」。
ここでは、特別支援教育の対象となる発達障害がある子も、自分の気持ちをうまくコントロールできない子も、みんな同じ教室で学びます。
ふつうの公立小学校ですが、開校から6年間、児童と教職員だけでなく、保護者や地域の人もいっしょになって、誰もが通い続けることができる学校を作りあげてきました。
すぐに教室を飛び出してしまう子も、つい友達に暴力をふるってしまう子も、みんなで見守ります。いまでは、他の学校へ通えなくなった子が次々と大空小学校に転校してくるようになりました。

このとりくみは、支援が必要な児童のためだけのものではありません。
経験の浅い先生をベテランの先生たちが見守る。子供たちのどんな状態も、それぞれの個性だと捉える。そのことが、周りの子供たちはもちろん、地域にとっても「自分とは違う隣人」が抱える問題を一人ひとり思いやる力を培っています。
映画は、日々生まれかわるように育っていく子供たちの奇跡の瞬間、ともに歩む教職員や保護者たちの苦悩、戸惑い、よろこび・・・。
そのすべてを絶妙な近さから、ありのままに映していきます。

そもそも学びとは何でしょう?そして、あるべき公教育の姿とは?大空小学校には、そのヒントが溢れています。みなさんも、映画館で「学校参観」してみませんか?

真鍋 俊永 監督

1969年徳島県生まれ。
1991年関西テレビ入社。現在、報道局報道センターに所属。「みんなの学校」はテレビ番組、映画としても初演出の作品。

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舞台挨拶(真鍋 俊永 監督)

 みなさん、こんにちは。
私は、地元のテレビ局である関西テレビの社員ですけども・・・、もう3年前になります。ここは阿倍野なんで、隣っていうか、長居公園のある近くにある小さな小学校の話なんですけれども。ちょうど大阪市長が橋下さんに変わって、学校の選択制とかが始まるし、こんな小さな学校っていうのは、もしかしたら、統合の対象になって、なくなるっていうようなこともあるのかなぁ、ってことが心配になって。元々は妻が学校を取材していました。
ほんとに、みんな特別支援とかいう、部屋を作らずにいろんな子達がこう一緒になって、学びあっていくようなすがたが素晴らしいなっていうなかで、そういう学校なくしちゃいかんよな、ということも思いながら、割と政治的なことも考えながら、取材を始めました。
 ところがこの学校の空気の中に飛び込むと、そんなこと実はどうでもよくなってきて。ああ、学校ってこういう楽しいところなんやなって。学校の取材ってのは、(私は)テレビの報道の人間なので、学校の取材はいるんですね。
例えば、入学式があります、卒業式がありますからと、ニュースの取材に行くとか、ちょっとしたこんなおもしろい保育をやってますから、ということで、取材に行ったりとか。そういう経験ってのはあったんですけど。
ずーっと、1年間。それも、朝から放課後まで、週5日間あるうちの3日間くらい、平均するとこちらの学校に通いました。
で、朝の8時に校門にみんな集まってくれるんですけどね。8時には着くようにして、「今日はカメラのおっちゃんたち、来てるよ」みたいな感じで、みんなに挨拶をしながら、そして1日が始まって。まあ、小さな学校なので一学年、2クラスずつ。実際の人数というと、ほんとに1クラス40人ぐらいずつなんていう学校なんですけどね。まあ、カメラマンと僕とが手分けをして、なにか怪しいことは起こっていないか、どこかでもめごとはないか、泣いてる子はいないか、何かおもしろいことはないか、みたいなことをウロウロウロウロ。学校の中を歩きまわるんですけども。まあ、普通の学校だと、たぶん、そんなことないんだと思います。ここの学校は本当に地域の大人もウェルカム。みんなでみんなを見ていきましょう。ってなことで、参観日っていうのがないんですよね。で、基本的には毎日いつでも来てください、気になったらいつでもどうぞどこでも見てくださいって。あんまりそうやって、言っちゃうとかえってあんまり親が来にくくなっているんで、月に2回この日は来やすい日ですよ、という日を設けているんですけども。基本的には、本当にいつ行っても開かれていて、自分の子供を見てもいいし、よそのクラスを見てもいいし、っていうふうにオープンにする。
もちろん、僕たちはこう何をとってはいけないってことは、まるでなくて、ずっと何でもどうぞってかたちで撮りました。最初はテレビだったので、放送することによって、また映画でも公開することで、その子のマイナスになるようなことだけはダメだ、っていうふうに言われて。それが、ほんとにマイナスになってないのかどうかっていうことは、私にはわからないんですけども。
自分の頭の考える範囲では、そういうところがないように、素敵に見えるように。まあ、それは何か捏造したりということではないんですけれども。
いいかたちで伝えるようにしようと思ってつくりました。
 そこから、いま問題は何が起こっているかっというと、テレビが放送されたのがもう、今から2年経っていて、徐々に徐々に、テレビの番組が良かったねっていうことになって。じゃ、もう少し長いやつつくりましょうかって。 それから映画にしたいってことで、映画にしました。全国的に言えば、「こうした学校つくろう」みたいなこと、「そんな学校は作れない」と思っていた人たちの心に少しずつ火がついたというか、そういったかたちで、いま拡がりつつあります。今日、ここで上映していただきましたけど、全国でも5箇所ぐらいで今日も、いろんなこういったかたちで、上映会を開いていただいています。
「こんな学校いいよね、作ろうね、作りたいね」って言っていただけていますけど、現状としては大阪では、まだ学校に行けない人たちがここへ引っ越してくるといったことがあります。
 決してこれは、ほんとに、大阪市にこんなに素晴らしい学校があると、大阪市の宣伝になっているはずなんですけども。こういう学校を沢山つくろうってことには、まだ動いていっていません。
もちろん、人それぞれがどんな学校にしたいってことは、あると思うんですけど。地域の学校を、どんなかたちにするのがいいんだろうっていうようなことを、いま子どもが学校に通ってない人たちにも、感じてもらって。別に、「こうじゃない、こんな学校をつくろう」でいいんですけども。なにが社会にとっていいんだろうか。私自身は何か、いま、いろんな・・・競争が苦しくて、学校に行けない子達がたくさん増えていて。逆にいま、じゃあ、フリースクールを学校と認めようみたいなことで。それも文科省とか、教育委員会がきっちり、こういう教育を行いますみたいなかたちで進めようってな動きがあるんですけども。もっと、自由に、優しく生きていけるというか。社会自体がまだそうでないので。学校からと社会から、少しでも、優しいものに変わっていかないかなあって考えています。

もうほんとに、こんな大勢の方が来ていただいて、また少しでも、かならずしもそういう同じような方向じゃなくていいんですけど、優しい方向に、社会を動かしていきたい。
そのために、大きなことじゃないんだけど。ちっちゃな出来る一歩!をやっていきたいなって。そんな種が蒔けると本当に良かったなぁと思っています。
本当に今日はみなさん、私の作った、この近所にある大空小学校の映画を見てくださいまして、ありがとうございました。

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