ヒューマンドキュメンタリー映画祭・阿倍野|第13回・2015年度映画上映

第13回(2015年)上映作品

鳥の道を越えて(93分)

67年前に失われた「カスミ網猟」の世界・・・。
自然と文化の関係を問い直す、鳥と人をめぐるドキュメンタリー。
北から南へ、南から北へと季節毎にたくさんの渡り鳥が日本に飛来する。かつては、空を真っ黒に埋め尽くすほどの大群が飛び交っていた。しかし近年その光景を目にすることはない。それはなぜだろう。
映画の舞台は監督・今井友樹の出身地、岐阜県東白川村。あるとき祖父・今井照夫から、「昔、あの山の向こうに“鳥の道”があった」という話を聞かされる。さらにカスミ網猟とよぶ鳥猟によって、その鳥を捕まえ食べていたという。どうして?なぜ?どうやって?・・・
祖父の語る内容が理解できない監督は、 “鳥の道”を探し求めて旅にでる。
渡り鳥の大群が渡っていた時代、村では「カスミ網猟」という鳥猟が行われていた。なぜカスミ網が昭和22年に禁猟になったのか、など、旅の過程で生まれるひとつひとつの疑問を丹念に追っていく。
失われた鳥猟と食文化の記憶を掘り起こす旅。それはわたしたちが意識しなくなった“限りある自然や他の生き物とどう向き合うか”という根源的なテーマへといざなっていく。

平成26年度文化庁映画賞・文化記録映画優秀賞
第88回キネマ旬報ベスト・テン文化映画部門第1位
第2回グリーンイメージ国際環境映像祭 グリーンイメージ賞
第56回科学技術映像祭内閣総理大臣賞

今井 友樹 監督

1979年岐阜県生まれ。
日本映画学校卒業後、民族文化映像研究所に入所。本作で劇場公開初監督を務める。
HP:https://www.torinomichi.com/

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舞台挨拶(今井 友樹 監督)


 今日は、お集まりいただきまして、本当にありがとうございました。
ヒューマンドキュメンタリー映画祭《阿倍野》、今年で13回目ってことで、先ほど、裏の方で50名近いスタッフのみなさんとか、ご来場いただいたみなさんのお顔を見られて、こういった場で上映できて、嬉しく思います。
ありがとうございます。
この映画はですね、祖父から聞いた昔話がきっかけでつくりました。
映画にも登場した祖父が子どもの頃に体験した記憶で、僕が子どもの頃に畑仕事を手伝っているときに教えてくれた話でした。
そのときに、一番びっくりしたのが、自分の田舎(岐阜県東白川村)は狭い谷間の集落なんですが、そこを見上げた空が真っ黒になってしまうくらいの鳥がいたって話を聞いて、そんなにもの鳥の数を見たことがなかったんですね。
それが、どうしていなくなったのだろうかと、ずっと心残りになっていたというのと、その想像もつかない世界が本当にあったのだろうかというのが、ずっと記憶に残っていまして、大人になったときに日本各地、記録する仕事をさせてもらっている中で、自分の故郷のことを何か記録に残したいって想いが芽生えたときに、祖父の話をふと思い出して、記録をはじめたのがきっかけです。
それがちょうど2006年。右も左もわからなかったので、8年かかってしまったんです。その中で祖父たちが、かつて「カスミ網」という猟法で、渡り鳥を獲っていたという話を聞いていて。当時、仕事をしていた僕は、週末を利用して、家(実家)に帰っていたんですね。すると両親が、「最近、週末になると帰ってくるけど何をしているんだ」と聞かれまして「カスミ網の取材をしているんだ」って話したら、両親が顔色を変えて、「その取材はしてはいけない」って僕に言ったんですね。
そのとき初めてわかったのが、カスミ網猟が禁止されていたというのはなんとなくわかっていたけども。禁止された以降も、密漁として自分の故郷にあったというのを知って、禁猟以前の生活文化としてのカスミ網猟と、禁猟後の自然保護や環境保全の中に捉えられるカスミ網猟の密漁という問題の、両方が自分の足元にあるということで、これをどう捉えていけばいいかっていうのが、の、自分の中で大きな、突き進めて行くテーマとなりました。
実際、取材を通してわかったことは、今でも、人と自然との付き合い方の折り合いっていうのは、まだわかっていません。問い続けていくことしかできないと思っています。
この映画が去年の11月に公開して、いろんな方に新たな情報や、意見など、話をうかがってく中で、その問いを深めていっているという状況です。
そういう意味では、故郷にある記憶ってものを辿っていくことをしまして、辿っていった世界が、まさに祖父が言ってきた時代(戦前戦中戦後の時代)をどう読み解いていくかってところが、自分の中で、自分が体験したことのない記憶を、祖父との時間の差であり、体験の差っていうものをどういうふうに、埋めていくかっていうのが、自分の課題で・・・。
想像力がいかに少ないかっていうのを思い知らされる、勉強になる、そういった意味では学ばせていただいた映画です。
ヒューマンドキュメンタリー映画祭《阿倍野》のテーマに沿った作品のラインナップを見る中で、自分の映画がどのように役立っていけるかなっていうことを、いま考えております。夕方のトークで、またお話させてもらえたらと思っています。

※ カスミ網猟
秋の季節に渡ってくる山越しの渡り鳥を捕獲する張り縄のことです。遠くから見ると網が霞んでみえることからカスミ網猟と呼ばれています。
1947年(昭和22年)にカスミ網猟は禁止されました。

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