第15回(2017年)上映作品
花はんめ(99分)
川崎のさくらもとに住むハンメ(在日のおばあちゃん)たちの、せつなくも、まぶしい物語。
舞台は、神奈川県川崎市桜本界隈。
在日韓国・朝鮮人が多く暮らす街。
そして描かれるのは、在日のおばあちゃんたちの「今」。
言葉では語り尽くせぬほどの苦労を重ねてきたおばあちゃんたち・・・
カメラはただ寄り添うように、
ひたむきに生きる彼女たちの「今」を映し出します。
おばあちゃんたちの「今」は、どうってことのない日常かもしれません。
でも80才をすぎてやっと手にできた温和な日常は、
人生の中で一番輝きを放っています。
タイムスリップしたような懐かしさの漂う路地裏。
「清水の姉さん」とみんなから慕われる孫分玉(ソンブンオク)さん(86)が住むアパート。
ここが映画の舞台。
その小さな部屋に、いつもいつもやって来るおばあちゃんたち。
たわいもない話に笑い、自分史を語り合い、涙を流します。
そして想い出の歌をうたい、踊る・・・
おばあちゃんたちはこの小さな部屋で、
置き去りにしていた青春を取り戻していくのです。
2004年に完成した『花はんめ』ハンメたちのほとんどは亡くなりました。今こそ、もう一度観てもらいたい映画です。
金 聖雄 監督
1963年大阪生まれ。これまで4本のドキュメンタリー映画を監督。
他にもPR映像、テレビ番組など幅広く手がける、フリーの映像演出家。
1998年 夏、私の母、金正順(キムジョンスン)は病死しました。77年の生涯・・・
母はしあわせだったのだろうか。末っ子で苦労をかけた私には、悔いが残りました。何もしてあげられなかったと・・・
『母や在日一世たちが、歴史の渦に飲み込まれながらも、日本という舞台でたしかに生きた、生きているというあかしを残したい』
この映画は私のそんな思いを仲間たちの力を借りてかたちにしたものです。私に出来ることは、小さなお墓を創るような気持ちで、映画をつくることでした。
おばあちゃんたちは、おしゃれで、おちゃめ。どこでも、歌って、踊るパワフルウーマン。そして喜怒哀楽の激しい超個性派ぞろい。おばあちゃんパワーが爆発すると、50年ぶりに水着でプールへザブン!
映画『花はんめ』の魅力は、今を力の限り生きようとするおばあちゃんたちの、さわやかな姿です。「生きることはこんなにステキなことなんだ・・・」
そのことを、理屈抜きに映画は語りかけます。きっとこの映画を観た誰でもが、映画から沢山の元気をもらうことでしょう。頭で考えすぎずに、さあ、歌って踊って笑って・・・
この作品は、おばあちゃんたちが持つ、力強さ、優しさ、そして個性溢れる言葉や行動力にスポットを当てています。ひとりひとりが尊厳をもって生きる姿を素直に描いた人間賛歌のヒューマンドキュメンタリーです。