第15回(2017年)上映作品
奈緒ちゃん(98分)
「姉に長女が生まれた。しかし、普通ではない、何かの病気のようだ」と知ったのは、記録映画の編集者だった父、伊勢長之助が亡くなった年。姉の長女、奈緒ちゃんの病気がてんかんで、知的障がいがあるとわかったのは、それからさらに数年後でした。
クランクインは1983年1月3日。8才になった奈緒ちゃんのお正月の初詣でのシーンでした。みんな手弁当での協力に、奈緒ちゃんのお父さんは「なんで、一銭にもならないことにあんなに夢中になれるのか。映画づくりにかかわる人達の気持ちは理解できない」とさかんに首をかしげていました。いわゆる福祉映画にするのはやめよう。そのために、奈緒ちゃんとその家族の普通の日々をしっかり見すえてゆこう、と奈緒ちゃんのもとへ通い続けました。
このフィルムには「しあわせ」が写っているとつぶやいたのは、大ベテランのカメラマン、瀬川順一さん。「しあわせ」という言葉がなぜだかとってもなつかしく、新鮮な響きに聞えたのを今でも忘れません。
〈しあわせ、家族のしあわせ〉奈緒ちゃんが家族に育まれ、家族が奈緒ちゃんに育まれた12年間の記録は1995年に完成、全国各地で500ヶ所を越える自主上映が行われました。
伊勢 真一 監督
ドキュメンタリー映像作家。1949年東京生まれ。
『奈緒ちゃん』『えんとこ』『風のかたち』をはじめ、数多くのヒューマンドキュメンタリーを製作。
『風のかたち』文化庁映画賞・カトリック映画賞受賞。
『大丈夫。』キネマ旬報文化映画第1位、
『傍(かたわら)〜3月11日からの旅〜』キネマ旬報文化映画第6位。
2012年日本映画ペンクラブ功労賞
2013年度シネマ夢倶楽部賞受賞。
近作は『シバ 縄文犬のゆめ』(2013年)
『妻の病 −レビー小体型認知症−』(2015年)
『ゆめのほとり −認知ープホーム 福寿荘−』(2015年)。
最新作は『いのちのかたち −画家・絵本作家 いせひでこ−』(2016年)。
現在、『元気? −奈緒ちゃん・36年の記録−』(仮題)を製作中。