監督:本橋成一

東京都出身。1963年自由学園卒業。九州・北海道の炭鉱の人々を撮り始め、その作品「炭鉱〈ヤマ〉」で、1968年第5回太陽賞受賞。1991年からチェルノブイリ原発とその被災地ベラルーシに通い始め、汚染地域で暮らす人々を撮影。1998年「ナージャの村」で第17回土門拳賞受賞。映画「ナージャの村」「アレクセイと泉」は高い評価を得る。2009年3月公開のドキュメンタリー映画「バオバブの記憶」は長年の想いが結実した作品。

【バオバブの記憶】

セネガルの首都ダカールから車で約2時間。
トゥーバ・トゥール村はどの家も大家族だ。
そこには多くのバオバブの樹と昔ながらの素朴な日常がある。
主人公は村に住む12歳の少年モードゥ。30人を超える家族の一員で、農作業や牛追いの手伝いをしながらコーラン学校に通っている。将来、外国に行って商売をしたいという夢があるので、その為にも本当は公立のフランス語学校で勉強したいと思っている。
映画には彼の陽気な家族達や、憧れの女性である隣家のファトマ先生、盲目の祈祷師や縄作りの名人など個性豊かな村人達が次々に登場する。
そして彼らの暮らしの背景にいつもどっしりと存在しているのがバオバブの樹だ。
バオバブには多くの使い道があり、村人の生活には欠かせない。
樹は子供達の遊び場でもある。葉や樹皮などは大いに利用するが、村人たちは決して切り倒す事はしない。なぜならバオバブには精霊が宿っていると、誰もが信じているからだ。村には御神木も存在し、人々は事あるごとにバオバブの精霊に祈りを捧げ、敬っている。
しかし近年、都市部では急速な近代化が進み、100年、500年、1000年と、この大地でたくさんの生きものたちと生きてきたバオバブが消え始めている。
トゥーバ・トゥール村に開発の波が押し寄せて来るのも時間の問題なのだろうか・・・

この映画は、バオバブと共に生きる一人の少年と家族の日々の営みを通して、人間と自然とが共存するとはどういう事なのかを静かに問いかける。
(100分)



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